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Double Chooz実験の概要


    実験の目的と方法

  • 実験の直接の目的: 飛んでいるニュートリノの種類が周期的に変わる現象を「ニュートリノ振動」と呼びます。 ニュートリノ振動を通してニュートリノの持つ非常に小さい質量や素粒子の混合の事が分かるので,その研究は今素粒子物理学の世界では,非常に注目されています。(詳しくは,「目指す物理」のページを見て下さい。) この実験の目的は,原子炉で発生する大量の反電子ニュートリノを用いてその振動を測定し,θ13という,まだ測定されていない最後のニュートリノ混合のパラメータを,これ迄と比べて約一桁良い精度で測定することです。 このページでは,その研究の為のダブル・ショー(Double Chooz)実験の概要について説明しましょう。
  • 実験の方法:
    1. ニュートリノの発生: 原子力発電所では,原子炉内でウランやプルトニウムの核分裂が次々と起って,その時に発生するエネルギーで電力を得ています。 この核分裂に伴って反電子ニュートリノも発生しますが,これは従来何もせずに宇宙の彼方に飛び去るだけでした。今回はそれをニュートリノ振動測定用のニュートリノとして利用する訳です。(今回の実験には直接には関係しないので,以下では,反ニュートリノ⇔ニュートリノの区別はしないで,単にニュートリノと書きます。)
      この実験の特長1: 発電をする時に生じるニュートリノを,「基礎科学」研究に利用する事です。従って,ニュートリノを作る為の装置を特別に作る必要がありません。勿論その為の費用はゼロです。これが,加速器によってニュートリノを作る実験との大きな違いの一つです。この,ある意味では「廃物利用」で,「最先端のニュートリノ研究」が出来るのです!
    2. ニュートリノ振動: ニュートリノは,ほぼ光の速さで飛びますが,飛んでいる途中に別の種類のニュートリノに変身する性質があります。例えば,ある地点で飛び出した「電子」ニュートリノが,徐々に「τ(タウと読みます。)」ニュートリノに変わっていき,最も多く変わった距離を過ぎると,またもとの種類のニュートリノに変わっていき・・・,これをくり返します。そのために「ニュートリノ振動」と呼ばれています。
    3. ニュートリノ遠距離検出器の設置: ニュートリノ振動現象を研究する為には,ニュートリノを検出する為の装置,ニュートリノ検出器 を,まずニュートリノの変身が最も大きく起ると予想される距離の付近に置きます。 これを「遠距離検出器」 と呼びます。 ニュートリノ検出器は,(1)ニュートリノが反応して僅かな光を出す標的とそこからもれたγ(ガンマ)線を捕らえて光らせる部分,(2)それらの光を感じて電気信号に変える部分,(3)宇宙線などによる雑音/バックグラウンドによる信号を検出する部分などの,バウムクーヘンのような多層構造になっています。
    4. ニュートリノの検出: 検出器の最も内側[上記の(1)]の部分にある液体シンチレータの中での陽子と反電子ニュートリノの反応の結果,陽電子と中性子ができます。これらはいずれも,その後起る反応で,数本のガンマ線を発生させ,それらが液体シンチレータを,一瞬ピカッと光らせます。 光と言っても,遠い宇宙のかなたの眼に見えない星の光のように,非常にかすかなものですので,それを電気信号にして増幅する為に,日本の技術(光電子増倍管)が使われます。 電気信号になったニュートリノ信号は,電子回路を通してコンピュータに読み込まれ,データとして記録されます。 そしてそのデータは,世界各地にいる共同研究者により,ネットワーク越しに,解析されます。
    5. この時光を電気信号に変換する部分には,スーパーカミオカンデ等で知られている,非常に感度の良い光センサーである光電子増倍管(浜松ホトニクス製)が使われています。 日本グループは,浜松ホトニクスと協力し合って,そのガラス等に含まれる放射性同位元素を少なくする事により,従来に比べて遥かに雑音を減らす事を実現しました。 また日本グループは,この光電子増倍管の責任グループとして,他国のグループの協力も得つつ,その装着にも責任を持ってあたり,グループ内で高い評価を得ています。
    6. ニュートリノの変身の度合い/ニュートリノ振動の測定: さて,ニュートリノの信号を捉えるだけではなく,それによって「飛行中にニュートリノがどれだけ変身して,発生した時の種類のものが無くなったか」を知らなければなければなりません。 そうすることで,検出した発生した時の種類のニュートリノの数が,ニュートリノ振動がないと仮定した予想値よりも小さくなっていれば,「振動が起って,別の種類のニュートリノに変わった」と言う事ができるのです。
    7. 検出精度の改善: 上で,飛行した後のニュートリノの数の減少を調べると言いましたね。しかし,飛行後のニュートリノの数はニュートリノ検出器で検出することで知る事が出来ますが,初めにどれだけ飛び出したかも知らなければなりません。それは,どのようにしてわかるのでしょうか? 勿論,このニュートリノは原子炉の出力エネルギーを生み出す核分裂で発生するので,発生した電力の記録から予想することができます。 以前の実験(ダブルショー実験の前身とも言えるもので,ショー実験と呼ばれています。)では,そのようにして行われました。 しかし今回目指すθ13を求める実験で予想される変身の度合いは非常に小さく,以前の実験では実験精度が十分でないので,「この値…よりも小さい」と言う事が言えただけでθ13が「ゼロでない」とまでは言えませんでした。従って今回は,大幅に精度を良くして,θ13が幾らかについての答えをだそうとしています。
    8. この実験の特長2: そこで今回は,近距離検出器を設置するという,特別の工夫がされました。
      • ニュートリノ振動が起る前の位置に,遠距離検出器と全く同じ大きさ・構造の検出器を置き(これを,ニュートリノの発生源に近くに置かれる事から,「近距離検出器」と呼びます。),そこでのニュートリノの検出数を調べます。
      • ニュートリノ振動が最大限に近く起る位置(これはこれ迄に得られた別の測定結果から,予想する事が出来ます。)付近に,既に紹介しました「遠距離検出器」を置き,そこでのニュートリノの検出数を調べます。
      • 最終的には,上記二つの検出器の性能が同じである事から,遠距離検出器で検出した電子ニュートリノの数を近距離検出器で検出した電子ニュートリノの数で割った量がニュートリノ振動によって失われた割合だと言う事が出来ます。(勿論,この時,ニュートリノが空間に広がって飛んでいくことによって生じる距離によるニュートリノ強度の違い(大まかには,距離の2乗に反比例する)を,数値的に適切に補正しなければなりません。)この工夫と検出器の大型化と改善によって,昔のショー実験の測定精度の約10倍の改善が期待できるのです!
    9. この実験の検出器は,遠距離/近距離ともに,山/丘の中に掘られたトンネルに設置されています。 これは,ニュートリノの反応がまれにしか起こらないので,宇宙から飛び込んでくる「宇宙線」の影響を減らす為です。このような実験は,「地下実験」と言われますが,詳しくはここをクリックして下さい。

    (図のクリック⇒拡大図)

    実験の現場(Chooz原子力発電所)の写真と実験装置の置かれる場所のイメージ図です。 図の中にある,丸い頭の円筒形の建物(2カ所)が原子炉(ニュートリノの発生場所)が格納されている建物で,遠距離/近距離検出器が置かれる場所も描き込まれています。

    (図のクリック⇒拡大図)

    フランス国内の原子力発電所の位置を示す図です。東北東の国境近くに,ダブルショー実験が行われるショー原子力発電所の位置が示されています。 ここから,車で10分程度北上するとベルギー国内に入ります。

  • 実験成果の見通し
    得られる実験データの精度の改善: この実験は,現在(2009年12月)準備の最後の追い込み中で,2010年の4月には全部の装置や解析のための準備がそろって,ニュートリノを検出/解析できる実験が開始される予定です。実験が開始されてからのデータの蓄積と,実験データの精度の改善の予想をあらわしているのが下の図です。
    (図のクリック⇒拡大図)